賃貸経営をしているというと、不労所得が得られて安泰というイメージがありますが、現実はそれほど甘いものではありません。
家賃収入と比較して経費が大きくなりすぎると、収支がマイナスになってしまう可能性もあります。見逃している毎月のわずかな違いが、年間では大きな差となります。
細部にわたって経費を見直し、本当に必要な負担だけに絞り込めれば、コスト削減が実現されます。
収益を確実に確保するための賃貸経営のコスト削減について解説していきます。
目次
アパート経営にかかる経費の種類
賃貸経営のコスト削減を進めるためには、経費を把握し、内容を理解する必要があります。ここでは、アパート経営について経費として認められるものを、具体的に見ていきましょう。
(1)支払い利子
アパート建設のために借り入れたローンの元本は経費の対象外ですが、利息部分は経費として計上できます。
ただし賃貸経営を開始する前の期間については、経費として認められません。
(2)減価償却費
減価償却は時間の経過とともに価値が減っていく建物や設備について、取得時にかかった費用を耐用年数に応じて分割し、計上する手続きです。
減価償却費は、「取得価格×償却率」で求められ、償却率は、建築材によって異なります。
鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年で、償却率0.022、木造は耐用年数22年で償却率0.046と定められています。
(3)損害保険料
賃貸アパートにかけている損害保険の保険料は経費に計上できます。
火災保険や地震保険のほか、賃貸住宅費用補償保険なども対象となります。その年にかかった保険料の分が計上されるため、保険料を一括払いした場合は、該当年度のみの計上となります。
(4)旅費交通費
賃貸物件の入居者募集や運営にかかわる交通費が、計上の対象となります。
(5)通信費
賃貸経営に関連した電話や郵便料金が、計上の対象となります。
(6)宣伝広告費
入居者の募集にかかわる広告費用や、不動産会社との仲介手数料が対象となります。
(7)管理委託費
入居者の募集・管理にかかった費用、管理会社への委託料、修繕のための積立金などを計上できます。
(8)水道光熱費
賃貸アパート経営者が負担する水道光熱費が計上の対象となります。
(9)修繕費
建物やそれに付属する設備について、現状の維持や災害などで破損したときの「原状回復」のためにかかった分が、修繕費として認められます。
外壁やベランダ、外柱の塗り替え、部屋の中の設備、畳の取り換えや障子・ふすまの張替えなども対象となります。
ただし、修繕前よりも材質や機能をグレードアップさせた場合には、資産価値を高める施策と見なされ、資本的支出となります。その場合には、修繕費として計上ができなくなり、減価償却費として処理します。修繕費と判断されるポイントは、次の2つです。
- ほぼ3年以内の期間を周期として修理や改良を行っている。またはひとつの修理の金額が20万円未満のとき。
- 資本的支出か修繕費か判断のつかない金額がある場合、その金額が60万円未満のとき。またはその資産の前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下であるとき。
(10)租税公課
アパート経営にかかわる税金は、必要経費として認められます。税金の種類としては、次のようなものがあります。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 事業税
- 契約書作成時の印紙税
(11)その他
税理士費用や運営顧問料、接待交際費、新聞図書費などが経費として計上できます。
経費コストの削減をするには?
賃貸アパートの管理を業務委託契約で管理会社に依頼しているケースは多く見られますが、契約内容の見直しを行い、必要以上の費用がかかっていないかを確認する必要があります。
契約によっては修繕の判断などがある程度自由裁量とされているなど、知らないうちに経費が膨らんでいることもあります。
賃貸物件の管理手数料は家賃の5%程度が相場となっていますが、契約内容によって3~8%の開きがあります。
各種契約書の内容を再度読み直し、適正価格であるかの確認を行っていきましょう。
賃貸アパート経営に関連する契約書には次のようなものがあります。
- 物件清掃契約書
- 遠隔監視業務契約書
- 昇降機点検業務契約書
- 設備点検業務契約書
多少手間はかかっても、修繕の業者を個別に依頼したり、管理費用を見比べて価格の安い管理会社に変更したりすることでコスト削減ができます。
共用部分の清掃は時間のあるときにオーナーが実施する、修理の必要があるときには管理会社ではなく直接入居者から連絡が入るようにするなど、できることを自分でやるとさらに経営コストを抑えられます。
経費を見直すポイント

アパート経営において運営コスト削減を実現するためには、どこでどのように費用がかかっているのか、ひとつひとつ丁寧にチェックしていかなければなりません。経費を削減するために、見直しをするポイントを見ていきましょう。
清掃費
月契約・年契約など契約の形態を確認し、現状と合う契約かどうかを判断します。スポット的な清掃ができる契約の方が、柔軟に対応でき利便性が高くなります。
物件の規模にもよりますが、月2回の清掃で月額15,000円~20,000円程度が相場です。料金に見合う清掃業務が行われているのかも、見直しの重要なポイントです。
周囲の見回りをかねてオーナーが清掃を行えば、年間20~30万円の節約になります。毎回の清掃が厳しいときには、シルバー人材センターを利用すれば数千円の支出に抑えられます。
各種点検費
各種点検費用については、法律で規定されている有資格者が行わなければならないものが多く、オーナーが自分でというわけにはいきません。
しかし、新築当時から一度も見直しをしていない場合、契約内容が現状とそぐわないというケースも多く見られます。しっかりと確認することで、経費の改善につながる可能性があります。
費用の相場としては、消防点検 が年5万円、エレベーターメンテナンスは POG契約の場合で月2.5万円程度です。
水道・光熱費
日常的に使われるものだけに、削減効果が得られるのが水道・光熱費の見直しです。地域によっては都市ガスからプロパンガスに変更すると、さまざまなサービスが受けられたりガス料金を削減できたりする可能性があります。
気象条件が良い場所であれば、太陽光パネルの設置で電気料金が節約できるだけでなく、余剰電力を買い取ってもらえるようになるかもしれません。そこまで手をかけなくても、電気料金が安くなる電力会社との契約を検討してみるくらいはすぐにできます。
夜間電力を活用する、節水型のシャワーや水栓に変えるなど、オーナーができる工夫はたくさんあります。経費削減のため、積極的に光熱費を見直していきましょう。
建築物定期点検報告費
建築基準法第12条により、建物の定期点検が義務付けられています。ただ、アパートの場合は自治体によって報告の必要がない場合もあるので、所有物件の地域についての確認が必要となります。
義務付けがある場合には国土交通大臣が認める有資格者により、3年に1度程度の点検を実施しなければなりません。
費用相場としては、建物の規模によりますが5万円~10万円程度です。
町内会費
金額が小さいため見落としがちですが、入居戸数分の徴収というシステムをとっている場合には、払い過ぎないように注意が必要です。
町内会によって仕組みが異なるため、交渉次第では最小限の負担にできる可能性もあります。
コスト削減の注意点
経費が多くなれば、税金を安くできる可能性が高くなりますが、偽の経費を計上するのは違法行為です。
悪質な脱税は犯罪行為とみなされ、賃貸経営に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。
コスト削減に努力することはもちろんですが、常に誠実な姿勢でアパート経営に臨みたいものです。
また、コスト削減を目指すあまり、共有部分の電灯を減らしたり清掃の回数を少なくしたりすると、入居者の満足度が低下します。
節約の意味をよく理解し、ケチ経営に陥らないよう注意しなければなりません。コスト削減をし、収益アップをねらうのは経営者としては当然ですが、アパート経営の本質は入居者が居心地よく暮らせるところにあります。
物件としての魅力を損なうような施策は、本末転倒とも言えるでしょう。
なるべくお金をかけずに物件の質を向上させていくためにはどうすれば良いか、オーナーの知恵と工夫が試されるところです。
まとめ
経費に計上できるから、といってずさんな経費管理をしていては、収益が上がりません。
運営コストを徹底的に見直し、引き締めとムダの排除を行って過不足のない賃貸経営を目指します。
限られた費用をどこにどのように使うかよく検討すれば、必ず効率的な賃貸経営が実現できます。できるところから今すぐに着手し、コスト削減への道を究めていきましょう。

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