賃貸経営の修繕費は節税できる?時期や費用相場から修繕へのリスクヘッジまで徹底解説

賃貸経営の修繕費は節税できる?時期や費用相場から修繕へのリスクヘッジまで徹底解説

賃貸経営(アパート経営・マンション経営)を始める前には、なかなか想像がつかない修繕費。管理会社に言われたとおりに数年おきの修繕計画を立てているから大丈夫と思っているかもしれません。

ですが、アパート経営・マンション経営では大規模修繕以外にも細々と修繕が必要になるもの。

また、節税のためにも賃貸経営での修繕計画を細かく検討し、出費に備えて積立をするのは大切です。

今回は賃貸経営(アパート経営・マンション経営)を始める時前に考慮すべき修繕費について詳しくご紹介します。

賃貸経営(アパート経営・マンション経営)における修繕費とは?

まず、修繕費の内容について説明しましょう。

アパート経営やマンション経営において建物の維持や建物の価値を高めるためのメンテナンス費用のことを修繕費と言います。

実は頻繁に修繕が必要な賃貸経営(アパート経営・マンション経営)

実は頻繁に修繕が必要な賃貸経営実は頻繁に修繕が必要な賃貸経営(アパート経営・マンション経営)

アパートやマンションの修繕と言うと、イメージするのは外壁塗装などの大規模な修繕ですが、実はそれ以外にも頻繁に修繕が必要です。

例えば入退去時にその都度行う原状回復も修繕に当たります。

原状回復は入居者の責任だけでなく、オーナーが負担すべき範囲についても国土交通省のガイドラインで定められています。

また、競合物件との差別化のために、設備の取り替えやリフォームをする必要もあります。これらも一部は修繕にあたります。敷地内の草むしり、共用部分のメンテナンスも修繕です。

「これらの支出は確定申告時に修繕費として経費計上できるから大丈夫」と貴方は思っているかもしれません。ところが、税法上ですべてが修繕費と認められるわけではないのです。

原状回復のための維持管理なら修繕費

修繕にかかる費用は、修繕費として確定申告時に経費として申告することで所得税、住民税の節税ができます。

ですが、修繕の規模や金額、目的によっては一括で計上できない場合もあります。

通常の修繕費として認められる修繕の範囲は、基本的に

  • かかった費用が20万円以下
  • 修繕の周期が3年以内
  • 通常の維持管理
  • 原状回復

に限られます。

アパートやマンションなどの資産価値を高めるなら資本的支出

一方、資本的支出とは「固定資産の使用可能期間を延長したり、価値を高める支出」のことです。

例えば、外壁塗装などの大規模修繕や設備の取り替えやリフォームなどにかかった費用は資本的支出として申告しなければなりません。

設備を新しくしたり、外壁を塗り替えて見栄えを良くすることはマンションやアパートの価値を高める目的で行う工事なので、資本的支出に当たるのです。

資本的支出は、修繕した資産の耐用年数に応じて減価償却率を掛けて計算し、分割して毎年経費として計上することになります。

外壁塗装などの大規模修繕では一時的にかかる金額の負担が大きい割に、その年に経費として計上できる金額は少なく、思うような節税効果が得られないこともあるのです。

ただし、資本的支出に当たる工事でも一定額以下の支出(20万円未満)の場合は金額によって一括または3年で均等に割った金額を修繕費として計上できる「一括償却資産特例」があります。

また、青色申告をしている場合は1件30万円未満の工事なら「少額減価償却資産」として経費計上できる特例もあります。

修繕費
  • 通常の維持管理
  • 原状回復
  • 20万円以下
  • 3年以内の周期
一括して経費として申告できる
資本的支出 固定資産の使用可能期間を延長したり、価値を高める支出 資産の耐用年数に応じて減価償却率を掛け、分割して毎年経費計上
一括償却資産特例
  • 10万円未満の工事
  • 10万円以上20万円未満の工事
一括または3年で均等に割った金額を修繕費として経費計上できる
少額減価償却資産 1件30万円未満の工事を合計年間300万円まで 青色申告者のみ

「どうせ修繕するなら、管理会社に頼んで一括リニューアルしたほうがお得なのでは?」と思いがちですが、実際は3年周期程度で少しずつ修繕している方が節税になる場合もありそうですね。

賃貸経営では的確な修繕費の予測と積立が重要

賃貸経営では的確な修繕費の予測と積立が重要賃貸経営では的確な修繕費の予測と積立が重要

国土交通省の調査によると、必要に迫られて修繕を行う予定であると回答したオーナーが大半を占めています。修繕について長期的な計画を持っていないケースの多さが問題として指摘されています[注1]。

このように修繕が後手に回ることのリスクは「建物の劣化」、つまりアパートやマンションの資産価値が落ちてしまうことです。

また、入居希望者は駅からのアクセスの良さや賃料の安さだけでは部屋を決めません。建物のメンテナンスが行き届き、新式の設備を備えた快適な部屋を求めています。

例えば、一昔前のワンルームマンションのようなバス・トイレ同室物件などは今や賃料値下げのリスクを持っています。入居者のニーズに敏感なオーナーならば、万難を排してリフォームをしているはずです。

このように、オーナーが修繕に関心が低いことは「空室リスク」に直結するのです。

必要に迫られて修繕を行う背景には、オーナーの資金不足も考えられます。自己資金のみで大規模修繕を行えず修繕のために再びローンを組むことはなるべくなら避けたいところです。

節税面ばかりでなく、大切な資産としてのアパートやマンションの価値を落とさないためにも、賃貸経営をするなら修繕計画をしっかり立ててそのための費用を準備しておくことが必須と言えます。

[注1]民間賃貸住宅ストックの質の向上について|国土交通省[pdf]

賃貸経営で必要な3種類の修繕費と修繕内容・相場の総まとめ

賃貸経営で必要な修繕費には大規模修繕費、小規模修繕費用、修繕予防費用の3種類があります。

大規模修繕費は、建物を維持するための工事にかかる費用です。建物の老朽化に伴い、いずれ必ずしなければならない工事ですが、多額の費用がかかります。修繕のスパンとしては、10年から15年です。

小規模修繕費用は入退去時の修繕にあたっての、原状回復修繕や、入居者から要請されて行う個室の設備の修繕、共用部分のメンテナンスなどの修繕費用に当たります。

修繕予防費とは、建物の老朽化予防を目的とした定期点検などの費用です。

大規模修繕費はアパートよりマンションの方が高額

10〜15年に一度必要になる大規模修繕の費用は、建物の構造で時期も費用も変わってきます。費用は木造、鉄骨、RC、SRCの順で高額になりますが、修繕期間は、同じ順でスパンが長くなります。

木造アパートは25年で減価償却され、建物としての資産価値がなくなるので、建て替えを視野に入れる必要もあります。

以下に、主な修繕の内容と周期、費用の相場についてまとめてみました。

【4階以下のマンション・アパート】

屋上・屋根・ベランダ防水工事 10〜15年ごと 7,000円~12,000円/㎡
外壁の塗装や張替え 10〜15年ごと 1,000円~30,000円/㎡
鉄製部分の防錆工事 4〜6年ごと 3,000円~5,000円/㎡
給水ポンプの交換 15~20年ごと 150万円~250万円
排水管・給水管の修理・交換 30年ごと 1戸あたり100万円

【4階以上のマンション】

エレベーター修理・交換 25〜30年ごと 500万以上〜

この他に大規模修繕では足場代もかかります。高層マンションでは通常の足場ではなく、クレーンをつかったり、吊り下げ式のゴンドラを使うなど特殊な工法を使うため、費用は高くなる傾向があります。

小規模修繕費用として計上できる原況回復修繕費

賃貸経営における代表的な小規模修繕には、原状回復のための退去時に必要な修繕があります。

賃貸物件の原状回復とは、「借りた当時と同じ状態にすること」ではありません。賃貸期間の経年劣化は借り主の責任ではなく、オーナーに資産維持のための修繕責任があるとされます。

一方、明らかに借り主の過失で傷つけてしまった部分は借り主が修繕費用を負担すべきとされます。

例えば、クロスの張り替えや、経年劣化した設備の交換は通常オーナーの原状回復修繕費用とみなされます。

クロスの張り替え 10年 1000円/㎡
給湯器の交換 10年〜15年 30万円〜
エアコン交換 10年 10万円/台
畳の交換 7〜8年で交換
裏返し
表替えし
1畳12,000円〜
1畳4,000円〜
1畳4,500円〜

原状回復のための修繕以外にも、入居者が賃貸している部屋に付随する設備の故障や、共用部分の不具合についてオーナーに修繕を依頼する場合もあります。その場合も小規模修繕費としてみなされます。

例えば、居室のエアコンが壊れたり、共用部分のガラスが割れた場合もオーナー負担の小規模修繕費に当たります。共用部分の電灯の交換、敷地内の草刈りにかかった費用も小規模修繕費となるはずです。

専有部分の設備の故障
例:エアコン
随時 5,000円〜
共用部分の設備の不具合
例:電灯交換
随時 1,000円〜

修繕予防費用は将来的な出費の節約になる

修繕予防費とは、建物の老朽化予防を目的とした定期点検などの費用です。

普段から修繕予防を心がけていると、老朽化に早めに手を打つことができ、大規模修繕を先に伸ばすことができたり、費用を抑えることも可能です。

例えば、屋上の防水工事、木造アパートでのシロアリ検査、また、外壁のチェックを業者に依頼することも修繕予防費用になります。

屋上の防水工事は規模が大きくなると大規模修繕とみなされる場合があるので、築年数の経過に応じて意識しておくことが大切です。劣化具合によっては修繕予防費用とすることも可能でしょう。

屋上防水工事

5年〜 4,000円/㎡〜 寿命は10年〜

シロアリ検査

随時 築後5年以上 点検だけなら無料の業者もあり 駆除 2000円/㎡
被害がひどい場合は建て替え

外壁のチェック

随時
外壁診断調査専門会社に依頼した場合
150円/㎡〜 塗装の寿命は10年〜
1,000円~30,000円/㎡

修繕費に関わるトラブルを回避するためリスクヘッジ5選

修繕費に関わるトラブルを回避するためリスクヘッジ5選修繕費に関わるトラブルを回避するためリスクヘッジ5選

賃貸物件の設備の故障への対応や、退去時の原状回復費用の分担など、入居者とのトラブルの多くは修繕工事や修繕費にまつわるものです。

また、オーナー自身が修繕費の準備が無いという事態に陥らないために、修繕費に関わるトラブルを回避のリスクヘッジを5つ紹介します。

①【入居者トラブルに対するリスクヘッジ】契約書・重要事項説明書を見直そう

一般的に入居者とのトラブルは修繕工事や修繕費にまつわるものが多く、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定めています。

法的な強制力はありませんが、このガイドラインに沿って賃貸契約を結ぶ際に取り交わす契約書・重要事項説明書を見直してみることをおすすめします。

双方に誤解のないわかりやすい内容かどうか確認し、必要があれば書き替えましょう。

こんな場合にはどちらが修繕費を負担するのか、なるべく具体的に書くと良いでしょう。契約時に念を押して貰いたい項目を、あらかじめ不動産仲介業者に伝えておくことも大切です。

②【原状回復費トラブルに対するリスクヘッジ】原状回復確認リストを作って入居者と一緒にチェック

退去時に問題になりやすいのは、区分設備の傷などが「入居時からあった」という入居者の主張です。

このようなトラブルを避けるために、既存の傷やシミなど原状回復時に問題になりそうなものは写真を撮っておきましょう。

また、チェックシートを作り、入居時に入居者と一緒にひとつひとつ確認したものを双方で保存し、退去時にそのシートと設備の状況等を突き合わせて確認すればトラブルは避けられるでしょう。

③【大規模修繕費に対するリスクヘッジ】修繕積立金を貯蓄してこまめな修繕で手持ちの資金を減らさない

いずれ必ずやってくる大規模修繕工事に備えて修繕積立金をしておきましょう。

一般的に賃料の5%を貯蓄に回すことが勧められますが、およその予算を割り出して、足りない場合には貯蓄の割合を増やし、できるだけ修繕時に手持ちの資金を持ち出さずに済むように検討します。

また、大きな修繕が必要になる前にこまめな修繕で出費を抑えることは、節税対策にもなり一石二鳥です。

④【中古物件の修繕費に対するリスクヘッジ】賃貸経営のために中古物件を購入する時は修繕履歴を確認する

中古物件を購入してアパート経営やマンション経営を始める場合は、購入前にその物件の修繕履歴を確認しましょう。修繕履歴を確認することで、今後必要な修繕の時期や規模がわかります。

大規模修繕工事を数年後に控えているような物件では積立が間に合わない恐れもあります。

また、修繕履歴がない、もしくは修繕履歴を記録していない物件は購入にあたっては慎重になったほうが良いかもしれません。

⑤【突然の修繕費発生に対するリスクヘッジ】火災保険などへの加入しておくと風水害等での修繕費に対応できる

近年の異常気象の影響で、首都圏でも思わぬ風水害等の自然災害被害を受けるケースが増えています。

突然の豪雨でエントランスが浸水した、大雪が降って外壁が破損したなど、予想していなかった突然の修繕費が発生しないとも限りません。

そんな場合に備えて火災保険等への加入をおすすめします。賃貸経営物件用のプランもあるので、自分のアパートやマンションの立地条件に適したタイプを賢く選びましょう。

まとめ

賃貸経営はリスクの少ない安定した不動産投資と言われますが、投資であるからには、リスクはつきものです。

リスクヘッジを設定し、オーナーとして投資物件を運用する意識を持つことで、アパートやマンションの資産価値が上がり、節税対策も可能になります。

賃貸経営成功の明暗を分けるのは修繕に対する意識の高さにあると言えるでしょう。

ABOUT ME
フドシル専属監修者 東
フドシル専属監修者 東
株式会社TonTon 不動産管理課 マネージャー。 2017年、不動産管理事業の立ち上げから1年半で650戸を新規受託。 リーシング、入居者対応、トラブル対応、リフォーム、保険対応、キャッシュフロー見直しなどあらゆる業務をこなす。 自身も不動産オーナーとして日々奮闘中。 2018年、賃貸不動産経営管理士試験合格。
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