ペット飼育可の物件は空室リスク低減および
入居者の定着率伸張が見込めるため、
オーナーにとってメリットが大きい賃貸経営です。
ただしペット飼育可の賃貸は入居者トラブルが起こりやすいため、
ペットを飼う世帯向けの特約事項や
原状回復に係る条件などを詳しく設定し、
ペットと飼い主にとって住みやすい環境づくりを行わなくてはいけません。
今回は、ペット飼育可の賃貸を経営する際のメリットとデメリット、
経営を成功に導くために知っておくべきノウハウと注意点などを紹介します。
目次
日本のペット飼育の現状とペット可物件の賃貸ニーズ

室内でペットの飼育が可能な賃貸物件は
日本のペット飼育現状から見てニーズが高い住環境であり、
そのニーズは今後さらに拡大する公算があります。
全国犬猫飼育実態調査の最新データによると、
2018年10月時点における全国の犬の飼育頭数は約890万頭であり、
猫の飼育頭数は約965万頭です。
同年の国内世帯数は約5,661万世帯であるため、
犬の飼育率は約12.6%で平均飼育頭数は1.2頭、
猫の飼育率は約9.8%で平均飼育頭数は1.7頭となっています[注1]。
[注1]平成30年全国犬猫飼育実態調査 主要指標サマリー|一般社団法人ペットフード協会[pdf]
さらに犬猫を飼育している世帯に係る意識調査では、
犬の場合「散歩・外出時以外は室内」が53.2%と過半数以上、
猫の場合「室内のみ」が78.3%であることから、
室内でペットを飼育している世帯は経年で増加傾向にあります。
このような現状から室内でペットを飼育できる住環境の消費者ニーズは高く、
ペット飼育可の賃貸はそのニーズを満たすことが可能です。
ペット飼育ができない最大の理由は「集合住宅で禁止されているため」
およそ10世帯につき1世帯が犬・猫を飼育している一方で、
やむを得ない理由からペットを飼いたくても飼えないという人が多く存在します。
そしてペットを飼育できない理由の多くは、「集合住宅で禁止されているため」です。
ペットフード協会が行った意識調査によると、
現在犬・猫を飼育していない最大の理由(総数:犬=935件/猫700件)で
最も多かった回答は、
それぞれ「集合住宅に住んでいて飼育が禁止されているから」(犬19.8%/猫25.3%)でした[注2]。
[注2]平成30年全国犬猫飼育実態調査 ペット飼育阻害要因|一般社団法人ペットフード協会[pdf]
犬や猫を室内で飼育する場合、
噛みつきやひっかきなどによって壁や床が傷んでしまうケースが多々あります。
そのため基本的に集合住宅では犬や猫の飼育が禁止されており、
室内でペットを飼いたい人はペットの飼育が
認められている物件を選ぶ必要があります。
もちろんマイホームであればペットを自由に飼えますが、
マイホームを所有することが難しい人は、
必然的に諦めるかペット可の物件を見つけなくてはいけません。
ペット飼育ができる物件には「ペット可物件」と「ペット共生物件」がある
一般的にペットの飼育ができる物件は、
「ペット可物件」と「ペット共生物件」の2種類があります。
ペット可物件とは
ペットの飼育が可能な物件ですが、
ペットを飼っている人と、飼っていない人が混在します。
皆さん動物が好きな入居者ならば良いのですが、
中には動物があまり好きではない方がいたり、
アレルギーを持ている方もいらっしゃるかも知れません。
ペットの臭いや騒音などの近隣トラブルにも注意が必要です。
ペット共生物件とは
ペットと一緒に暮らすことを前提としている物件です。
入居者のほぼ全員がペットを飼育しています。
ペットの設備が充実していることが挙げられますが、
そのぶん初期費用や賃料がかさむ傾向にあります。
ペット飼育ができる物件を経営するメリット

次に、「ペット可物件」「ペット共生物件」それぞれを経営する主なメリットをみていきます。
ペット可物件 |
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ペット共生物件 |
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ペット可物件経営の場合
ペット可物件は、すでにペットを飼育している、
または今後ペットを飼育して暮らしたいと考えている入居者を募ることが可能です。
ペットを室内で飼いたいという需要は高いため、
ペット可物件であれば立地が多少悪かったとしても
多くの入居者を集客できるケースがあります。
加えて同一エリアに競合となるペット可物件が存在しない場合、
家賃や敷金などの交渉をオーナーが有利に進められるでしょう。
一般的な賃貸と比べて家賃や敷金が割高であったとしてもペットを飼える物件は限られているため、入居希望者はオーナーが提示した条件を快諾してくれる余地があるのです。
ペット共生物件経営の場合
一方でペット共生物件は入居者がペットと住むことを前提とした物件であるため、
よりペットに対する意識が高い入居者を募ることが可能です。
さらに大型犬や多頭飼いを認める場合、
これらのライフスタイルを望む層も獲得できます。
また基本的に入居者はペットを飼育しているため、
ペットを飼っていない入居者と価値観の相違から
トラブルに発展するリスクを低減可能です。
ペット飼育ができる物件を経営するデメリット
次に、デメリットをみていきましょう。
トラブルの原因となる内容や賃貸経営における課題が異なります。
ペット可物件 |
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ペット共生物件 |
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ペット可物件経営の場合
ペット可物件はペットを飼っている人専用の物件ではないため、
ペットを飼っていない人でも「職場まで通いやすい」や「外観・内装が好み」といった理由から入居を希望する場合があります。
そのためペットを飼っていない人が入居した場合、
鳴き声や臭いなどを理由に入居者間のトラブルに発展するリスクがあるのです。
ペットを飼っていない入居希望者が現れた際は、
ペットによる鳴き声や臭いが気になるかもしれない旨を
事前に説明しておきましょう。
とくに階段やエントランスといった共用スペースは
ペットを飼っている入居者とそうでない入居者の双方が利用するため、
ペットによる汚損や破損が発生した際は迅速な対応が必要です。
さらに「ペット不可」であった物件を後から「ペット可」に変更する場合、
もとから住んでいる入居者からクレームが寄せられ、
トラブルや退去につながるリスクが高いので注意しましょう。
ペット共生物件経営の場合
ペット共生物件の場合、
人はもちろんペットも快適に暮らせるように専用の足洗い場や小窓といった、
ペット専用の設備・仕様を備えなくてはいけません。
さらに内装の損傷を低減するために、
ペット用のクロスを敷くといった工夫も求められます。
それでも内装が汚損・破損するケースは多々あるため、
退去した際の修繕費が高額になりがちです。
またペットの飼育意向がない人が入居することは稀であり、これらの層を獲得できる見込みは低いというデメリットもあります。
ペット飼育ができる物件の賃貸経営成功ノウハウ4選
ペット可物件は入居希望者に対する契約内容や敷金の設定などに注意しなくてはいけません。
契約内容によっては入居後にトラブルが発生する場合もあります。ペット可物件の賃貸経営成功ノウハウは次の通りです。
①飼育条件を詳細に設定する

単純に「ペット飼育可」とする文言だけの場合、ペットの頭数や種類などが入居者の解釈によって異なり、オーナーと認識の差異から契約後のトラブルを招くケースがあります。
そのため入居希望者と契約する際は、ペットの大きさ制限や頭数規制、原状回復に係る条件などを詳細に設定しておきましょう。
例として犬の飼育を認める物件の場合、「大型犬は禁止」や「室内犬に限り◯頭まで可能」といった飼育を認める犬の対象や条件を細かく設定します。
さらに一定の動物を規制するケースでは「小動物の飼育は禁止」といった文言ではなく、爬虫類や鳥類など動物ごとに規制対象を明記しましょう。
入居希望者に対して具体的な飼育条件を示すことで、入居後のトラブルを回避できます。
ペット可物件は一般的な賃貸と比べて修繕費が高額になる傾向であるため、原状回復のリスクヘッジを行う体制づくりも必要です。
内装の損傷が著しい場合は比例して負担額が増すため、「敷金は家賃2ヶ月分を支払ってもらう」といった条件をキャッシュフローに合わせて適宜設定しましょう。
②入居前に十分な説明をして合意した人と契約する
ペット可の賃貸経営におけるトラブルは、
ペットの鳴き声や臭気、原状回復に係る費用といった内容が多い傾向です。
そのため入居希望者と契約を結ぶ際は入居前に飼育条件や費用に関して十分な説明を行い、合意が得られた場合のみ契約しましょう。
入居者が契約内容をしっかり確認しておらず、
退去時に請求した修繕費を断られるといったトラブルも少なくありません。
またペット可物件は防音性能に長けた壁材や構造を導入していた場合でも、
飼育しているペットの種類や躾などによっては
鳴き声が隣人の睡眠を阻害するなどの迷惑を引き起こす場合があります。
このような生活における注意点およびトラブルを起こさないための対策などを入居希望者に対してしっかり説明し、理解および同意が得られた入居希望者に限り契約を結びましょう。
③敷金・共益費を高く設定する
ペットを飼育していた入居者が退去した際にかかる高額な修繕費を確保するために、敷金・共益費のいずれか、もしくは両方を一般的な賃貸より高く設定しましょう。
一般的な賃貸では敷金を不要とするケースもありますが、
ペット可物件の場合は原状回復を行うための費用として、
退去時に数カ月分の家賃を敷金として請求するというオーナーも存在します。
家賃自体を上げて原状回復に必要な必要を少しずつ回収するという手段もありますが、
家賃が高いと却って入居者希望者が減少する場合があります。
賃貸を探している人にとって家賃は重要なポイントであるため、
ペット飼育可であったとしても予算オーバーな物件は避けられてしまうのです。
都市部で賃貸の需要が高いエリアは家賃が高くても入居希望者が現れやすいですが、
郊外や地方である場合は過度に高い家賃を設定しないように注意しましょう。
数ヶ月の家賃を敷金として設定する場合、
入居希望者にあらかじめペット可物件は
一般的な賃貸より修繕費が高額になってしまう旨を伝えることで、
その条件を受け入れてくれる余地があります。
迷った際は同一エリアにおける他のペット可物件の
敷金・共益費を参考に設定するという方法もおすすめです。
④ペット飼育の場合の退去費用に関する特約事項を設定する
室内でペットを飼育する入居者向けに、
退去費用に関する特約事項を設定しましょう。
契約時に特約事項を設けることで、
一定の条件に該当する場合は退去費用が発生することを
入居希望者に伝えることが可能です。
特約事項の具体的な文言は、下記の例を参考にしながら適宜な内容を設定しましょう。
ペットの飼育により、カーペット・クロス・建具・設備機器等にキズ、汚れ、臭気が付着した場合の修復・消毒・清掃・臭い消し等の費用は借主負担とします。
ペットと暮らしやすい環境づくりが大切
ペットの飼育を認める物件であるからには、
ペットと飼い主の双方が暮らしやすい環境でなくてはなりません。
ペット可物件であったとしても
「入居者間のトラブルが頻繁に発生する」や
「共用スペースの臭いや汚れがひどい」など、
住み心地の悪い物件は入居者の即時退去につながってしまいます。
例として共用スペースにペット専用の足洗い場を設ける、
ペットが内装を傷付けないように専用のクロスを敷く、
遮音性に長けた壁材を使用するといった環境づくりが重要です。
ペットと飼い主の双方にとって住みやすい環境であれば、
退去リスクを軽減して入居者が長く住まう賃貸を経営できます。
また同一エリアに競合となるペット可物件が存在する場合は、
その物件にはない設備やサービスを導入することで
差別化および集客力を高めることが可能です。
入居者間のコミュニケーション促進も大切

入居者間のトラブルを防止するために、
コミュニケーションの促進や入居者との意見交換といった取り組みも欠かせません。
実際、ペット可物件を経営している賃貸オーナーを対象に行った意識調査によると、
ペット可物件を経営するに際して工夫している事例として、
「賃貸者(入居者)と適度に連絡をとる」や
「適度な見回りとコミュニケーションの充実」などを挙げるオーナーが存在します。[注3]
[注3]トチカツのススメ ペット可賃貸アパート経営の実際|セキスイハイム
まとめ
ペットを室内で飼いたいという需要が高いことから、
賃貸をペット飼育可にすることで空室リスクを低減可能です。
さらにペット可物件は他の賃貸と差別化を図ることも可能であるため、
競合の多いエリアで賃貸を経営する場合は選択の余地があります。
ペット飼育可の賃貸は一般的な賃貸と比べて契約内容を緻密に設定する必要があり、
修繕費も高額になりがちですが、
入居率・定着率を高めるといったオーナー側のメリットが大きい賃貸経営です。

- ・ちゃんと管理してくれているのかよくわからない
- ・毎月の管理手数料が腑に落ちない
- ・担当者がイマイチ冴えない
- ・空室が長期化して困っている
- ・入居者が長く住んでくれない
- ・経営に関しての最適な提案がない
- ・建物・設備の維持管理をどうすればいいかわからない
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