賃貸オーナーにとって特に大きな悩みとなる問題のひとつが「家賃の滞納」です。
家賃の滞納は発生しやすいリスクであるだけでなく、
早期解決しなければ不動産経営そのものに支障をきたす問題です。
家賃の滞納トラブルが発生したとき、
賃貸物件の管理を管理会社に委託していない場合は、
オーナー自身で家賃の督促を行わなければなりません。
いきなり強制執行や明け渡し請求を行うことなく、段階を踏むことも重要です。。
そこで今回は、家賃保証会社に加入せず、
ご自身で管理をされている大家さんに向けて、
適切な家賃の督促方法から、督促状の作成方法、さらに禁止されている督促行為について
詳しく解説します。
家賃滞納にお困りのオーナーはもちろん、
今後賃貸経営を検討している方も、ぜひご確認ください。
家賃保証会社に加入している大家さんは、
基本的に家賃保証会社が滞納家賃の立て替え払いや督促、
その他業務を行いますが、その内容は契約ごとに異なるため、
今一度家賃保証会社との契約内容を確認することをお勧めします。
家賃滞納の対応に関しては、
不動産取得の際に媒介や仲介をしてくれた不動産会社が責任を負うことはなく、
委託先されていれば管理会社または家賃保証会社の範疇であることも覚えておきましょう。




家賃未払いに対する支払いの催促方法と督促のタイミング


借主から支払い日に入金がない場合は、
まずは未納の事実を伝えるためにも、なるべくすぐに連絡し、
遅延の理由を聞く必要があります。
家賃滞納が起こった場合は以下のような順番で督促を行いましょう。
- 【滞納から1週間以内】電話・訪問による督促
- 【滞納から2週間以降】督促状による督促(内容証明)
電話・訪問による督促
最も一般的な方法が「電話や訪問による督促」です。
借家人の留守番電話に家賃督促のメッセージを残すことも有効です。
さらに、オーナーが滞納者の住む賃貸物件に訪問できる場合は、
直接部屋を訪問しても良いでしょう。
しかし、以下のような督促は法律で禁止されているため、督促時には注意が必要です。
- 早朝(午前8時以前)や深夜(夜9時以降)の電話や訪問による督促
- 数時間おきに電話したり、同日に何度も訪問して督促すること
いくら家賃を滞納されているオーナー側でも、非常識な行動をとることはよくありません。
さらに問題を大きくしてしまう可能性もありますので、
円満に解決したいのであれば、
オーナー側もきちんと誠意を持って対応する必要があります。
督促状による督促
電話や訪問をしても連絡がつかない・家賃を支払ってもらえないという場合は、
書面での督促を行います。
督促状の送付は、
電話や訪問に比べて確実に借主に滞納の事実・支払期限などを知らせることができるため、
滞納していた家賃の支払いが期待できるでしょう。
督促状の作成方法


家賃滞納は、うっかり忘れたケースから、
支払わないことが常習化しているケースまでさまざまです。
いずれにしても毅然とした態度での督促・文書を送付することが大切です。
督促状の記載事項
滞納から1~2週間ほどの期間中は、
家賃の督促状は以下の9項目について、丁寧な文章で作成するのが一般的です。
しかし家賃の督促を行っても一向に家賃の支払いが確認できなかった場合は、
督促状も滞納期間に合わせて、文面を変えなければなりません。
- 督促状作成日
- 借主(契約者)名
- 貸主の情報(住所・氏名・電話番号など)
- 物件情報(貸主の情報・物件名・部屋番号など)
- 未入金の通知および支払への督促文面
- 支払期限
- 振込先
- 請求額
- 支払われなかった場合の対応
上記9項目の中でも、特に重要となる5~9の項目を順番に解説します。
督促状の内容と発送後の対応
督促状の内容は、家賃滞納からどのくらい経過したかによって異なります。
ここからは、実際に督促状を作成する際に役立つ
「効果的な督促状の具体的な作成方法」と、
支払いがなかった場合の「契約解除に向けた文書作成」について解説します。
①未入金の通知および支払いへの督促文面
【家賃滞納から1~2週間程度】未入金の通知および支払への督促
家賃滞納期間から1~2週間程度は、借主とできるだけ良好な関係を続けられるよう、
「家賃についてのご連絡」など柔らかい表現を心がけましょう。
【家賃滞納から3週間~4週間程度】未入金の通知および支払への再督促
1回目の通知後、家賃滞納から約半月経過した場合には
「未入金家賃のお支払いについて」「連帯保証人への連絡・遅延損害金の発生の示唆」
などと、強めに督促を行います。
今回は契約者だけでなく、早い段階で連帯保証人宛にも同時に通知すると良いでしょう。
【家賃滞納が1ヶ月以上となった場合】賃貸契約の解除や法的措置の示唆を加えた督促
家賃滞納が1ヶ月以上となった場合の督促状は、
「賃貸契約の解除や法的措置の示唆」を加えた督促状を作成します。
- 支払期限
家賃督促状の発送から1週間程度を設定します。支払いが難しい場合は、相談の連絡を促す文面があれば、支払う意思を確認できます。 - 振込先
振込先の記載がなければ、「振込先が分からなかったため支払いに応じることが出来なかった」と言われかねません。
通常の振込先と同じ場合でも、念を押す意味で振込先を記載しておくことで、早期の振り込みが期待できます。 - 請求額
請求額は「家賃滞納月数」と「滞納金額」に加え、場合により「遅延損害金」を合計した総額を提示します。
滞納者が事実確認できるよう、内訳も記載しましょう。 - 支払われなかった場合の対応
滞納初期~1ヶ月の督促状では「遅延損害金発生・法的措置の示唆」について記載します。
滞納を続けた場合、
契約解除・裁判・強制退去といったリスクがあることを
しっかりと理解してもらいましょう。
②契約を解除するために
【家賃滞納3ヶ月後から】催告書の送付(法的手段による解決を図る旨、及び契約解除予告通知)
賃貸借契約は、長期にわたる関係が想定されている契約です。
民法上、貸主が一方的な契約解除を簡単に行うことができないことが定められており、
「滞納が3ヶ月以上」「常習性・悪質性が高い」など、
借主・貸主の関係が破綻している場合にしか法的措置をとることができません。
このときに作成する文書が「催告書」です。
督促状とは異なり、
「〇月〇日までに支払がなければ、法的手段による解決を図る」
という内容を記した文書のことです。
併せて今後の契約を解除するという、契約解除予告通知書の内容も組み込みましょう。
催告書はオーナーが家賃の支払を催促し、
契約解除の意思表示を行ったことが、
公的に証明できる「内容証明郵便」で送付します。
文書を第三者の手渡しにより通知したという証拠は裁判の際に重要な証拠となります。
家賃支払い督促時の注意点


居住者保護の観点から、
現在の法律では家賃の取り立てに対して厳しい規制がかけられています。
その規制を逸脱し、不法行為とみなされた場合は、
オーナー側が損害賠償など処罰の対象となります。
- 遅延損害金の設定額督促状
- 発送についての禁止行為
- その他の禁止されている行為
家賃支払いの督促で法律を遵守しながらも、
家賃回収を確実に行うためには上記の3点に注意が必要です。
ここからは、それぞれ詳しく説明します。
遅延損害金の設定額
遅延損害金とは、
賃料が延滞する日数に応じて、借主が損害賠償として負担しなければならないお金のことです。
多くの場合、賃貸契約を結ぶ際の契約書に記されています。
賃貸借契約を結んでいることから、
家賃滞納の発生は「借主の債務不履行」とみなされます。
そのため、民法第415条の「遅延損害金(年5%)」では、
契約書に遅延損害金の記載がなくても、
年5%という利率を請求合計額に適用させた遅延損害金を請求することが可能です。
一方、法定利率は任意規定であるため、
消費者契約法9条第2号で定められている「遅延損害金は年14.6%まで」という上限
を守れば、利率は自由に決めることができます。
合理的実費相当額として「督促手数料」「口座振替手数料」といった名目で請求する場合も、年14.6%の利率を超えると違法請求となるため注意が必要です。
督促状発送についての禁止行為
電話や訪問での督促における禁止行為をすでにご紹介しましたが、
「督促状の発送」を行う際にも気を付けるべき禁止行為があります。
- 連帯保証人以外の家族
- 職場への督促行為や督促状発送
- 正当な代理人等以外の第三者に督促行為を依頼すること
- 第三者にわかるように督促状と分かる張り紙などを掲示する行為禁止
これらの督促行為は借主の日常生活を脅かすものとなるため、法律で禁止されています。
連帯保証人以外の家族や親族には滞納家賃の連帯保証責務はないため、
契約者と連絡がつかないなどの正当な理由がない限り、
なるべく控えておきましょう。
その他の禁止されている行為
家賃の滞納は、オーナーにとっては死活問題であるため、
滞納家賃を回収する権利があります。
しかし、借主にも私生活を守る権利があります。
- 暴言・暴力・脅迫といった厳しい態度・文面での督促
- 3名以上の多数人で訪問する
- 滞納者の物件のカギ交換を行ったり、家財道具などを勝手に搬出する
滞納分の家賃を早く回収したいところではありますが、
上記の行為は恐喝罪など法律に触れる可能性が高くなります。
部屋の明け渡し裁判となった際に不利となるどころか、
オーナー側が罪に問われる可能性もあるため、絶対に行わないようにしましょう。
【テンプレート】家賃滞納者に対する督促状の文例
それでは、禁止の督促行為・言い回しに注意しながら督促状を作成しましょう。
まずは、督促状作成時に必須のポイント3つを再確認します。
- 契約情報と滞納の事実を明確に記載すること
- 支払期日を明確にすること
- 支払が確認できなかった場合の措置も記載すること
支払期日を記載する時は、
「~日までに」と記載し、「早急に」など支払いを急かす文言の記載は避けましょう。
また、支払いが無い場合の賃貸借契約の解除や法的手続きに入ることを示唆も大切です。
上記にしっかり留意して、督促状を作成しましょう。


(ダウンロード)督促状テンプレート(Word文書)のダウンロードはこちらから
まとめ
賃料滞納が発生した場合には、
相手の立場を尊重しつつも、毅然とした姿勢で家賃の回収に取り組むことが大切です。
賃貸物件の経営では、家主・借主間で金銭を介した契約を結んでいるため、
裁判に発展せざるを得ない状況に陥ることもあります。
しかし、裁判となると時間や労力だけでなく、費用も消費することとなるため、
なるべく法的措置を取る前に家賃を回収したいところです。
家賃の滞納によるトラブルを大きくしないよう、
ここまでご紹介した適切な督促方法や督促状の作成方法を参考に、
早めの行動を意識しましょう。






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